東京高等裁判所 昭和37年(ネ)28号 判決 1962年5月02日
控訴人 東京竹馬株式会社
被控訴人 清水一郎
主文
原判決を取消す。
被控訴人の請求を棄却する。
訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
事実
控訴人は、主文と同旨の判決を求め、被控訴人は控訴棄却の判決を求めた。
被控訴人主張の請求原因事実は次のとおりである。
被控訴人は、昭和三三年五月三〇日訴外三宅四郎に対する横浜地方裁判所昭和三二年(ワ)第一一〇〇号約束手形金請求事件の執行力ある正本に基き、右訴外人が控訴人に対し、昭和三三年五月三〇日現在で有している洋服生地販売の手数料一九万円の債権を差し押え(横浜地方裁判所昭和三三年(ル)第一一九八号債権差押命令)、昭和三六年九月一六日取立命令(横浜地方裁判所昭和三六年(ヲ)第一八六九号)を得た。右取立命令は債務者たる訴外三宅四郎に対しては送達不能に終つたが、第三債務者たる控訴人には昭和三六年九月一六日送達せられた。よつて、被控訴人は訴外三宅四郎の控訴人に対する右手数料債権を取立て得る権利を取得したので、控訴人に対し、右金一九万円及びこれに対する訴状送達の翌日たる昭和三六年一〇月二六日から支払ずみに至るまで、商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。
右に対し控訴人は次のとおり答弁した。
被控訴人が、その主張の訴外三宅四郎に対する債務名義に基いて、その主張の債権差押命令及び取立命令を得た事実は、これを認めるが、控訴人が訴外三宅四郎に対し被控訴人主張の債務を負担していることは否認する。<証拠省略>
理由
被控訴人が、訴外三宅四郎に対する被控訴人主張の債務名義に基いて、同訴外人が控訴人に対し金一九万円の債権を有するとなし、横浜地方裁判所昭和三三年(ル)第一一九八号債権差押命令を以て右債権を差押え右差押命令が債務者及び第三債務者に送達のあつたこと、竝に被控訴人が同庁昭和三六年(ヲ)第一八六九号債権取立命令を以て右債権の取立命令を得たことは、当事者間に争いのないところである。而して、右取立命令が債務者たる訴外三宅四郎には不送達に終つたが第三債務者たる控訴人に昭和三六年九月一六日送達せられたとの被控訴人主張の事実については、控訴人において明らかに争わないからこれを自白したものとみなす。してみれば、右取立命令は、控訴人に送達せられた、昭和三六年九月一六日にその効力を生じたものと解するを相当とする。或はこの点につき、民訴法第六〇〇条が同法第五九八条第三項を準用していないところから、取立命令が効力を生じるには、第三債務者への送達だけでは足りず、債務者への送達をも必要とする旨の見解があるけれども、取立命令の場合を差押命令の場合と別異に解する必要がないから、右の見解には従い得ない。
従つて、債権者たる被控訴人は、右取立命令に基き取立権を取得したものというべきであるが、控訴人が訴外三宅四郎に対し、被控訴人主張の債務を負担している事実は、これを認めることのできるなんらの証拠はなく、却て当審証人山口喜代治、三宅四郎の各証言によれば、右債務の存在しないことが明らかである。
されば、被控訴人の本訴請求は結局失当であるから、これを棄却すべく、本件控訴は理由があるから、民事訴訟法第三八六条、第九六条、第八九条に則り、主文のとおり判決する。
(裁判官 鈴木忠一 菊池庚子三 宮崎富哉)